インターナショナルスクールとは、主に英語を教授言語として国際的なカリキュラムに基づく教育を提供する学校です。近年、グローバル人材の育成ニーズの高まりを背景に、日本国内のインターナショナルスクール市場は拡大を続けています。一方で、経営者の高齢化や競争環境の変化により、インターナショナルスクールのM&A・事業承継に注目が集まっています。本記事では、インターナショナルスクール業界のM&Aについて、市場動向から具体的な事例、成功のポイントまで網羅的に解説します。
インターナショナルスクール業界の現状と市場動向
日本国内のインターナショナルスクール市場は、校数・生徒数ともに増加傾向にあり、成長市場として注目されています。
市場規模と校数の推移
文部科学省および各種調査によると、各種学校として認定されたインターナショナルスクールは全国に約143校、在籍者数は約31,000人に達しています。さらに、英語で保育を行うプリスクール(2〜6歳対象)は年間20〜30校のペースで増加しており、国内に500校以上が存在すると推計されています。プリスクールに在園する乳幼児は約6万人に上り、未就学児向けの英語教育市場は特に活発です。世界的に見ても、インターナショナルスクールの生徒数は2030年に1,000万人に達すると予測されており、日本市場もこの世界的な成長トレンドの中にあります。
需要拡大の背景
インターナショナルスクール市場が拡大する背景には、複数の要因があります。第一に、グローバル化の進展に伴い、幼少期から英語環境で教育を受けさせたいと考える日本人家庭が増加しています。第二に、在日外国人の増加により、母国語や英語で教育を受けられるスクールへの需要が高まっています。第三に、東京都をはじめとする自治体がインターナショナルスクールの誘致を推進しており、制度面での環境整備が進んでいます。
業界特有の課題
一方で、業界には構造的な課題も存在します。インターナショナルスクールの多くは学校教育法上の「一条校」に該当せず、各種学校や無認可の教育施設として運営されています。このため、公的な助成金や税制優遇を受けにくく、経営の安定性に課題を抱えるケースがあります。また、質の高い外国人教員の確保が困難であること、年間200〜300万円に及ぶ高額な学費が保護者の負担となること、施設の維持・拡充に多額の投資が必要であることなども、経営上の重要な課題です。
インターナショナルスクール業界でM&A・事業承継が増加している背景
インターナショナルスクール業界では、複数の構造的要因によりM&A・事業承継の件数が増加しています。譲渡企業・買い手双方にとって合理的な選択肢として、M&Aが広く認知され始めています。
経営者の高齢化と後継者不足
インターナショナルスクールの多くは、教育に情熱を持つ個人が創業したケースが少なくありません。創業から20〜30年が経過し、創業者が引退を検討する時期を迎えていますが、国際教育に精通し、かつ経営能力を持つ後継者を見つけることは容易ではありません。中小企業庁の調査によれば、中小企業の廃業のうち約3割が「後継者難」を理由としており、インターナショナルスクールも例外ではありません。M&Aによる第三者承継は、後継者不在の課題を解決する有効な手段です。
競争環境の激化
海外有名校の日本進出が相次いでおり、競争環境は激化しています。2022年に開校したハロウインターナショナルスクール安比ジャパンや、ラグビースクールジャパンなど、英国の名門校が日本市場に参入しています。このような大型スクールとの競争において、中小規模のインターナショナルスクールは単独での生き残りが難しくなりつつあり、大手教育グループへの参画やM&Aによる経営基盤の強化を選択するケースが増えています。
規模拡大とDX推進のニーズ
買い手側にとっても、インターナショナルスクールのM&Aは魅力的な成長戦略です。既存の教育事業にインターナショナルスクールを加えることで、幼児から高校生までの一貫教育体制を構築できます。また、オンライン教育やEdTechとの連携により、教育の質を向上させながらコスト効率を改善する取り組みも進んでいます。教育のDX推進においても、M&Aを通じたノウハウの獲得が有効です。
譲渡企業側のメリット
インターナショナルスクールのオーナーにとって、M&Aには以下のようなメリットがあります。創業者利益を確保しながら引退できること、従業員(教員・スタッフ)の雇用を継続できること、生徒・保護者への教育サービスを途切れさせないこと、そして大手グループの経営資源を活用してスクールのさらなる発展が期待できることです。特に教育事業においては、生徒や保護者との信頼関係が重要であるため、廃業ではなくM&Aによる承継が望ましい選択肢といえます。
インターナショナルスクールのM&Aにおける相場・バリュエーション
インターナショナルスクールのM&A価格は、生徒数や収益性に加え、教育プログラムの質やブランド力など、業界特有の要素が評価に大きく影響します。
一般的な評価方法
インターナショナルスクールの事業価値評価には、主に以下の手法が用いられます。年倍法(年買法)では、時価純資産に営業利益の2〜5年分を加算して算出します。DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)では、将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて算定します。類似取引比較法では、過去のインターナショナルスクールM&A事例における売上高倍率や利益倍率を参考にします。小規模なプリスクールの場合、譲渡価格は数百万円〜数千万円程度、中規模以上のスクールでは数千万円〜数億円が一般的な相場です。参考事例として、レアジョブによる東京インターナショナルスクールグループの買収では、取得価額は約5億2,000万円(売上高10億円規模)でした。
業界特有の評価ポイント
インターナショナルスクールのバリュエーションでは、以下の要素が特に重視されます。生徒数と定員充足率は収益の安定性を示す最も重要な指標です。国際認定機関(IB、CIS、WASCなど)の認定取得状況はブランド価値に直結します。立地条件(駅近、外国人居住者が多いエリアなど)も重要です。教員の質と定着率、カリキュラムの独自性、保護者コミュニティの強さなども評価対象となります。
インターナショナルスクール業界のM&A事例
インターナショナルスクール業界では、大手教育企業による買収から個人間の事業譲渡まで、さまざまな形態のM&Aが行われています。以下に代表的な事例を紹介します。
事例1:ビジネス・ブレークスルーによるアオバジャパン・インターナショナルスクールの子会社化
2013年、大前研一氏が代表を務めるビジネス・ブレークスルー(BBT、東証上場)は、1976年創立のアオバジャパン・インターナショナルスクールを運営するアオバインターナショナルエデュケイショナルシステムズの株式67.3%を取得し、子会社化しました。取得価額は約1億200万円です。BBTはこの買収により、幼児から高校生までの国際教育と、社会人向けビジネス教育を一体化した「1歳から大学院までの生涯教育プラットフォーム」の構築を実現しました。現在はAoba-BBTグループとして、国際バカロレア(IB)認定校として高い評価を得ています。
事例2:レアジョブによる東京インターナショナルスクールグループの買収
2025年8月、オンライン英会話大手のレアジョブは、東京インターナショナルスクールグループ(TIS、東京都目黒区)の全株式を取得し、完全子会社化しました。取得価額は約5億2,131万円です。TISは東京都内で未就学児向け保育施設と学童保育施設の計8施設を運営しており、2025年3月期の売上高は10億円でした。レアジョブはオンライン英会話から対面教育へと事業領域を拡大し、子ども向け事業の強化と教育ブランドの確立を目指しました。なお、レアジョブ自体もその後、学研ホールディングスによる完全子会社化が発表されており、教育業界の大型再編の一端を担う事例となりました。
事例3:関東圏のインターナショナルプリスクールの事業譲渡
横浜市内で運営されていたインターナショナルプリスクールの株式譲渡案件では、黒字・無借金経営で約100名の園児を有するスクールが売却されました。未就園児向けの平日プリスクールを中心に安定した経営基盤を持ち、買い手はインターナショナルスクールの運営実績を持つ教育事業者でした。このように、地域密着型のプリスクールにおいても活発なM&Aが行われています。関連する業種のM&A動向については、英会話スクールのM&A解説記事もご参照ください。
インターナショナルスクールのM&Aを成功させるためのポイント
インターナショナルスクールのM&Aでは、教育機関特有の要素に配慮したデューデリジェンスと移行計画が成功の鍵を握ります。
デューデリジェンスの重要項目
インターナショナルスクール特有のデューデリジェンス項目には、国際認定(IB、CIS、WASCなど)の取得状況と更新条件、教員の在留資格・労働許可の確認、各種学校認可の有無と関連する法規制の確認、カリキュラムのライセンス契約の確認、施設の賃貸契約条件(長期契約の有無)、生徒の在籍状況と退学率の推移などがあります。これらは一般的なM&Aのデューデリジェンスに加えて確認すべき事項です。
譲渡企業が準備すべきこと
スムーズなM&Aを実現するために、譲渡企業側は以下の準備を行うことが重要です。財務諸表の整備と正確な収支の把握、教員との雇用契約書の整備、生徒・保護者との契約関係の明確化、知的財産(独自カリキュラム、ブランドなど)の権利関係の整理、そして許認可関連書類の整備です。日本語学校など類似の教育機関のM&Aについては、日本語学校のM&A解説記事も参考になります。
従業員・顧客への配慮
インターナショナルスクールのM&Aでは、教員と保護者への配慮が極めて重要です。外国人教員にとっては、経営者の変更が在留資格に影響する可能性があるため、早期に安心感を与える必要があります。保護者に対しては、教育方針やカリキュラムの継続性を丁寧に説明し、信頼関係を維持することが不可欠です。M&A後も教育の質を維持・向上させるための移行計画を策定し、関係者全員に共有することが成功の要因となります。幼児教育分野のM&Aにおける留意点については、幼児教育・知育教室のM&A解説記事も併せてご確認ください。
インターナショナルスクールのM&A・事業承継なら教育業界M&A総合センターへ
インターナショナルスクールのM&A・事業承継をお考えの方は、教育業界に特化したM&A仲介会社である教育業界M&A総合センターにご相談ください。
当センターを運営する株式会社M&A Do(代表取締役 濱田 啓揮)は、教育業界専門のM&Aアドバイザーとして、インターナショナルスクール特有の許認可や国際認定、外国人教員の雇用管理といった専門的な論点にも精通しています。
譲渡企業様の仲介手数料は完全無料です。着手金・中間金も一切いただきません。秘密保持を徹底し、生徒・保護者・教職員に情報が漏れることなく、安心してM&Aを進めることが可能です。
まずはお気軽に無料相談をご利用ください。インターナショナルスクールの事業価値の簡易査定も無料で承っております。
お問い合わせ先:教育業界M&A総合センター
電話番号:03-4560-0084(平日9:00〜18:00)
よくある質問(FAQ)
Q1. インターナショナルスクールのM&Aにかかる費用はどのくらいですか?
A. 教育業界M&A総合センターでは、譲渡企業様の仲介手数料は完全無料です。着手金や中間金も発生しません。M&Aにかかる期間は案件の規模によりますが、一般的に6か月〜1年程度です。
Q2. M&Aの情報が生徒や保護者に漏れることはありませんか?
A. 秘密保持契約(NDA)を締結し、情報管理を徹底しています。M&Aの交渉段階では、生徒・保護者・教職員への開示は行いません。最終契約締結後に、適切なタイミングと方法でお知らせするのが一般的です。
Q3. 国際認定(IBなど)はM&A後も維持できますか?
A. IB(国際バカロレア)やCISなどの国際認定は、経営主体が変更された場合でも、認定機関への届出と審査を経て維持できるケースが大半です。M&Aの計画段階で認定機関との事前確認を行うことが重要です。
Q4. 外国人教員の雇用はM&A後も継続されますか?
A. M&Aのスキームによりますが、株式譲渡の場合は雇用契約がそのまま継続されます。事業譲渡の場合は新たな雇用契約の締結が必要ですが、在留資格の変更手続きを含め、適切な移行計画を策定することで、教員の継続雇用を確保できます。
Q5. 小規模なプリスクールでもM&Aは可能ですか?
A. 可能です。園児数20〜30名程度の小規模なプリスクールでも、安定した運営実績や立地条件によっては買い手が見つかるケースが多くあります。まずは無料相談で事業価値の簡易査定をお受けください。
