はじめに
留学エージェント事業は、海外留学を希望する学生や社会人に対し、留学先の紹介・手続き支援・現地サポートを一括で提供するサービスです。コロナ禍で大きな打撃を受けた留学斡旋市場は2023年以降急速に回復し、再び成長軌道に乗っています。一方で、経営者の高齢化や競争環境の激化、デジタルシフトへの対応など、事業オーナーにとって経営課題は山積しています。こうした背景から、留学エージェント事業におけるM&A・事業承継が注目を集めています。本記事では、留学エージェント事業のM&Aについて、業界動向から具体的な事例、成功のポイントまで詳しく解説します。
留学エージェント事業の現状と市場動向
留学エージェント事業の市場は、コロナ禍からの回復を経て堅調に拡大しています。世界の留学エージェント市場規模は2023年時点で約168億米ドル(約2.5兆円)に達し、2030年までに約272億米ドルへ成長する見通しです(年平均成長率7.36%)。特にアジア太平洋地域の成長率は7.60%と高く、日本を含むアジア圏からの留学需要が市場をけん引しています。
日本国内に目を向けると、矢野経済研究所の調査によれば、2024年度の語学ビジネス市場規模は主要13分野合計で前年度比100.2%の7,906億円と推計されています。なかでも留学斡旋市場はコロナ禍で大きく落ち込んだ後、回復率が最も高い分野の一つとなっています。コロナ禍前の2019年時点で日本人留学生は年間約15万人、留学マーケットは200億〜300億円規模とされ、2024年にはこの水準を超える勢いで回復しています。
業界の主要プレイヤーとしては、スマ留(株式会社リアブロード)、EF Education First、留学ジャーナル、ISS留学ライフ、ラストリゾートなどが挙げられます。近年はスマ留のように、語学学校のオフピーク時間を活用して留学費用を最大半額にするという新たなビジネスモデルも登場し、業界構造が変化しています。一方、中小規模のエージェントは価格競争やオンライン集客力の差から経営が厳しくなるケースも増加しています。
留学エージェント事業でM&A・事業承継が増加している背景
留学エージェント事業においてM&A・事業承継のニーズが高まっている最大の要因は、経営者の高齢化と後継者不足です。留学エージェントの多くは、海外経験を持つ個人が起業し、20年以上にわたり経営してきた中小企業です。中小企業庁の調査によれば、中小企業経営者の約245万人が60歳以上に達しており、その約半数が今後10年以内に引退年齢を迎えると見込まれています。留学エージェント業界も例外ではなく、創業者が引退を検討する時期に差し掛かっています。
競争環境の変化も大きな要因です。大手資本の参入やオンライン完結型サービスの台頭により、従来型の対面カウンセリング中心のエージェントは差別化が難しくなっています。英会話スクール業界と同様に、デジタルマーケティングやシステム投資の負担が中小エージェントにとって大きな課題となっています。
さらに、買い手側にとっても留学エージェント事業は魅力的な投資対象です。旅行業や教育事業を展開する企業にとって、留学エージェントの顧客基盤・海外ネットワーク・ブランド力は、自社事業とのシナジーを生み出す貴重な経営資源となります。留学需要の回復に伴い、M&Aを通じた業界再編が加速しているのが現状です。
譲渡企業(譲渡希望者)にとってのM&Aのメリットは明確です。事業の存続と従業員の雇用維持が実現できるだけでなく、大手グループの傘下に入ることでマーケティング力やシステム基盤が強化され、顧客により良いサービスを提供できるようになります。また、創業者は株式売却益を得て、新たなキャリアやセカンドライフに踏み出すことが可能です。
留学エージェント事業のM&Aにおける相場・バリュエーション
留学エージェント事業のM&Aにおける企業価値評価では、一般的にインカムアプローチ(DCF法)、マーケットアプローチ(類似企業比較法)、コストアプローチ(純資産法)が用いられます。中小規模のエージェントでは、年買法(時価純資産+営業利益の2〜5年分)が実務上よく用いられます。
留学エージェント事業特有の評価ポイントとしては、以下の項目が重要です。年間送客数と送客先の多様性は収益安定性の指標となります。提携する語学学校・教育機関のネットワーク数と関係の深さは、競合優位性を左右します。リピーター率や紹介率は顧客満足度の証であり、将来の収益予測に直結します。また、ウェブサイトのドメインパワーやSEO評価、SNSフォロワー数といったデジタル資産も近年重視されています。
一般的な相場としては、年間送客数100名以下の小規模エージェントで1,000万〜3,000万円、年間送客数100〜500名の中規模エージェントで3,000万〜1億円、複数拠点・海外現地法人を持つ大規模エージェントで1億〜5億円以上が目安となります。ただし、特定の国・分野に強い専門性を持つエージェントは、送客数以上の評価を受けるケースもあります。
留学エージェント事業のM&A事例
留学エージェント事業に関連する実際のM&A事例を紹介します。
事例1:アドベンチャーによるQuesqu(LALALA Plus)の子会社化(2024年)
2024年5月、オンライン旅行予約サービスを運営する株式会社アドベンチャーは、神奈川県横浜市の株式会社Quesquの全株式を約5.1億円で取得し、完全子会社化しました。Quesquはオーストラリアやカナダへの留学サービスを提供する「LALALA Plus」を運営しています。アドベンチャーのオンラインマーケティング力とLALALA Plusの現地サポート体制・留学プランの多様性を組み合わせることで、留学事業の強化を図る狙いです。旅行業と留学業のシナジーを活かした好事例といえます。
事例2:NYC株式会社によるグローバルリソースマネジメントへの投資(2025年)
2025年5月、中小企業やベンチャー企業への投資事業を展開するNYC株式会社は、フィリピン・セブ島への語学留学に特化した「セブ島留学センター」を運営する株式会社グローバルリソースマネジメントの株式を取得しました。グローバルリソースマネジメントは2012年の創業以来、Webマーケティングを活用してセブ島留学の分野で国内トップクラスのシェアを築いてきました。NYCグループの経営資源を活用し、さらなる成長・発展を目指すM&Aです。本件はM&Aキャピタルパートナーズが仲介しました。
事例3:教育系企業による留学関連サービスの統合
教育業界では、インターナショナルスクールや英会話スクールを展開する企業が、留学エージェント事業を買収して教育サービスのワンストップ化を図るケースも増えています。例えば、株式会社レアジョブ(東証グロース上場)は子ども専用オンライン英会話のリップル・キッズパークを子会社化し、オンライン英語教育から留学支援まで一貫したサービス体制の構築を進めています。また、ビジネス・ブレークスルー(東証プライム上場)も子供専用オンライン英会話スクールのブレンディングジャパンを子会社化するなど、語学教育と留学の垂直統合が進んでいます。
留学エージェント事業のM&Aを成功させるためのポイント
留学エージェント事業のM&Aを成功させるには、デューデリジェンス(買収調査)において以下の項目を重点的に確認することが重要です。
第一に、提携先教育機関との契約内容を精査する必要があります。海外の語学学校や大学との提携契約がオーナー個人に紐づいている場合、M&A後に契約が継続できないリスクがあります。法人契約への切り替えや、提携先からの承諾取得を事前に進めることが不可欠です。
第二に、旅行業法上の登録・許認可の確認です。留学エージェントが旅行業登録を行っている場合、M&Aのスキームによっては登録の再取得が必要になることがあります。行政手続きのスケジュールを事前に把握し、事業の空白期間が生じないよう計画する必要があります。
第三に、譲渡企業が準備すべき事項として、直近3年分の財務諸表の整備、送客実績データの整理、顧客リスト(個人情報保護に配慮した形式)の準備、主要スタッフの契約状況の確認があります。これらの資料が整っていることで、買い手からの評価が高まり、交渉がスムーズに進みます。
従業員・顧客への配慮も欠かせません。留学カウンセラーは顧客との信頼関係が事業の根幹であり、キーパーソンの離職は事業価値の毀損に直結します。M&A後の処遇や役割を明確にし、早期に安心感を与えることが成功の鍵です。また、留学手続き中の顧客に対しては、サービスの継続性を担保するための引き継ぎ計画を綿密に策定する必要があります。
留学エージェント事業のM&A・事業承継なら教育業界M&A総合センターへ
教育業界M&A総合センターは、教育業界に特化したM&A仲介サービスを提供しています。留学エージェント事業をはじめ、英会話スクール、インターナショナルスクール、日本語学校など、語学・国際教育分野のM&Aに豊富な知見を有しています。
当センターの特長は、譲渡企業様の仲介手数料が完全無料である点です。「事業を譲渡したいが、費用面が不安」というオーナー様でも、安心してご相談いただけます。また、M&Aに関する情報は徹底した秘密保持のもとで管理し、従業員や取引先に知られることなく検討を進められます。
留学エージェント事業の売却・譲渡をお考えの方、まずは事業価値の無料査定だけでもお気軽にお問い合わせください。経験豊富な専門アドバイザーが、最適なM&A戦略をご提案いたします。
お問い合わせ先:教育業界M&A総合センター
電話番号:03-4560-0084(無料相談受付中)
よくある質問(FAQ)
Q1. 留学エージェント事業の売却にかかる費用はどのくらいですか?
教育業界M&A総合センターでは、譲渡企業様の仲介手数料は完全無料です。M&Aアドバイザリー費用を気にすることなく、事業売却の検討を始められます。別途、税理士・弁護士への相談費用が発生する場合がありますが、まずは無料相談でお気軽にご確認ください。
Q2. M&Aのプロセスにはどのくらいの期間がかかりますか?
留学エージェント事業のM&Aは、一般的に相談開始から成約まで6か月〜1年程度です。事前の資料準備が整っている場合は、3〜6か月で成約に至るケースもあります。留学の繁忙期(春・秋の出発シーズン前)を避けてスケジュールを組むと、事業への影響を最小限に抑えられます。
Q3. 従業員や留学カウンセラーの雇用は守られますか?
多くの場合、買い手企業は既存の従業員やカウンセラーの継続雇用を前提としてM&Aを検討します。留学エージェント事業では、カウンセラーと顧客の信頼関係が事業価値の重要な構成要素であるため、人材の維持は買い手にとっても最優先事項です。雇用条件はM&A契約の中で明確に定められます。
Q4. 留学手続き中の顧客がいる場合でもM&Aは可能ですか?
可能です。M&Aの実務では、手続き中の顧客に対するサービスの継続性を担保する引き継ぎ計画を策定します。顧客に不利益が生じないよう、綿密なPMI(統合後マネジメント)計画を事前に準備することが重要です。
Q5. 売却を検討していることが外部に漏れる心配はありませんか?
教育業界M&A総合センターでは、秘密保持契約(NDA)を締結した上でM&Aプロセスを進めます。従業員、提携先の語学学校、顧客に情報が漏れることのないよう、厳格な情報管理体制を敷いています。安心してご相談ください。
