看護学校は、地域医療を支える看護人材を養成する教育機関として長年にわたり重要な役割を果たしてきました。しかし近年、少子化による志願者の減少、看護系大学の増加に伴う競争激化、経営者・理事の高齢化などを背景に、閉校や募集停止に追い込まれる看護学校が全国で相次いでいます。こうした中、M&A・事業承継は看護学校の存続と地域医療人材の確保を両立させる有効な選択肢として注目を集めています。本記事では、看護学校業界の現状から具体的なM&A事例、成功のポイントまでを詳しく解説します。

看護学校業界の現状と市場動向

看護学校業界は、深刻な構造変化の渦中にあります。看護師養成所の入学者数は5年連続で減少しており、2023年度の入学者数は約6万171人と、2018年度と比較して約7,000人減少しました。

看護系大学はこの10年間で全国88校増加し、2023年度には283大学・入学定員26,023人に達しています。一方、看護短期大学や看護専門学校はあわせて58校が減少しました。4年制大学への志向が高まる中、専門学校への志願者は年々減少の一途をたどっています。

准看護師課程の定員充足率は平均53%にまで低下し、看護師2年課程では58.5%、看護師3年課程でも75%と、いずれも深刻な定員割れの状況です。日本医師会は「各地の養成所の閉校が相次いでおり、これまでと次元が異なる状況だ」と危機感を示しています。

埼玉県では看護専門学校44校のうち少なくとも7校が学生の募集停止を表明し、鳥取県米子市の米子医療センター附属看護学校は2026年度末での閉校が決定、京都府医師会看護専門学校も2029年3月での閉校を発表するなど、全国各地で看護学校の閉校・統合が加速しています。

一方で、超高齢社会の進行により看護師の需要はむしろ増加しています。2025年には約5人に1人が75歳以上となる中、地域医療を支える看護人材の確保は喫緊の課題です。この需給ギャップが、看護学校のM&A・事業承継の重要性を一段と高めています。

看護学校業界でM&A・事業承継が増加している背景

看護学校のM&A・事業承継が増加している最大の要因は、経営環境の急速な変化と後継者問題の深刻化です。

経営者・理事の高齢化と後継者不足

看護学校の多くは医師会立や医療法人立、個人立で運営されています。設立から数十年が経過し、創設時の理事長や校長が高齢化する一方、後継者となる人材の確保が難しくなっています。特に地方の中小規模校では、運営を引き継ぐ意思と能力を持つ後継者が見つからないケースが増えています。

経営の悪化と収支構造の変化

定員割れが常態化する中、学生納付金の減少が直接的に経営を圧迫しています。一方で、実習施設の確保や専任教員の人件費、教育設備の維持・更新にかかるコストは削減が困難です。補助金収入だけでは経営を維持できず、赤字が累積する看護学校も少なくありません。

看護系大学との競争激化

看護系大学の増加により、高校生の志望先が専門学校から大学へシフトしています。大学では学士号の取得が可能であり、保健師や助産師の受験資格も得やすいことから、専門学校との差別化が困難になっています。この競争環境の変化が、単独での経営維持を困難にしています。

M&A・事業承継による譲渡企業側のメリット

看護学校の経営者にとって、M&A・事業承継には多くのメリットがあります。地域の看護人材養成機能を存続できること、教職員の雇用を維持できること、在校生の学習環境を守れること、そして長年の教育実績とブランドを次世代に引き継げることが挙げられます。さらに、譲渡対価を得ることで創設者やその家族の生活基盤を確保することも可能です。

看護学校のM&Aにおける相場・バリュエーション

看護学校のM&Aにおける譲渡価格は、学校の規模、立地、定員充足率、教育実績、不動産の有無などによって大きく異なります。

一般的な評価方法としては、純資産に営業利益の3〜5年分を加算する年倍法(年買法)が基本となります。ただし、赤字経営の学校が多い現状では、不動産評価額や学校法人としての認可価値を重視した評価が行われることもあります。

看護学校特有の評価ポイントとしては、以下が挙げられます。定員に対する充足率と入学志願者の推移、国家試験合格率(全国平均は約90%前後)、実習先の医療機関との提携関係、校舎・実習室などの教育設備の状態、専任教員の質と定着率、そして都道府県知事からの養成所指定(認可)のステータスです。

小規模校(定員40名程度)では3,000万〜8,000万円、中規模校(定員80〜120名)では8,000万〜3億円、大規模校や不動産を含む案件では3億円以上が目安となります。ただし、不動産の評価や負債の状況によって大きく変動するため、専門家による個別評価が不可欠です。

看護学校業界のM&A事例

看護学校を含む教育・医療分野では、近年さまざまな形態のM&A・事業承継が実施されています。以下に代表的なパターンを紹介します。

事例1:医療法人による看護学校の取得

大手医療法人が、経営難に陥った地方の看護専門学校を設置者変更により取得したケースです。医療法人は自グループの病院・クリニックへの人材供給ルートを確保する目的で看護学校を取得し、実習先の充実や奨学金制度の拡充によって入学者数の回復に成功しました。譲渡企業側の理事長は後継者不在の課題を解消し、教職員の雇用も全員維持されました。

事例2:学校法人同士の合併による経営基盤強化

2022年4月、学校法人明浄学院が運営する明浄学院高等学校は、学校法人藍野大学に設置者変更されました。移管後には看護メディカルコースなどの新コースが敷設され、医療系大学のリソースを活用した教育の質の向上が図られています。このように、医療系大学を持つ学校法人が高等学校や専門学校を取得し、看護教育の一貫体制を構築するケースが増加しています。

事例3:異業種企業による看護教育事業への参入

介護・福祉事業を展開する企業が、看護専門学校の運営権を取得するケースも見られます。介護現場での看護師不足を自社で解消する狙いがあり、入学者に対する就職先の保証や奨学金の提供を通じて、定員割れの改善と人材パイプラインの構築を同時に実現しています。日本語学校のM&A事例と同様に、人材確保を目的とした教育機関のM&Aは今後も増加が見込まれます。

看護学校のM&Aを成功させるためのポイント

看護学校のM&Aは、一般的な企業のM&Aとは異なる特有の注意点があります。成功のためには以下のポイントを押さえることが重要です。

デューデリジェンスの重要項目

看護学校のM&Aにおけるデューデリジェンスでは、通常の財務・法務調査に加え、都道府県の養成所指定要件の充足状況、専任教員の資格・配置基準の遵守、実習施設との契約内容と継続性、過去の国家試験合格率の推移、そして学校法人の場合は寄附行為や理事会の構成を重点的に確認する必要があります。

譲渡企業が準備すべきこと

円滑な事業承継のためには、財務書類の整理と情報開示の準備、教職員との雇用契約の明確化、実習先との契約更新・引き継ぎ体制の確認、在校生への影響を最小限に抑える移行計画の策定、そして関係省庁への届出・許認可に関する事前確認が重要です。

教職員・在校生への配慮

看護学校のM&Aでは、教育の継続性が最も重視されます。在校生が卒業まで同じ環境で学べること、教職員の雇用条件が維持されること、カリキュラムや教育方針の急激な変更がないことを明確にすることで、関係者の不安を払拭し、スムーズな移行を実現できます。幼稚園のM&A事例でも同様に、生徒・保護者への配慮が成功の鍵となっています。

看護学校のM&A・事業承継なら教育業界M&A総合センターへ

看護学校のM&A・事業承継は、教育行政の許認可や医療機関との連携など、業界特有の専門知識が不可欠です。教育業界M&A総合センターは、教育業界に特化したM&A仲介サービスを提供しており、看護学校を含む教育機関のM&Aに精通した専門アドバイザーが在籍しています。

当センターの特長は以下の通りです。教育業界に特化した豊富な知見とネットワーク、譲渡企業様の仲介手数料は完全無料、秘密保持を徹底した安心のプロセス、そして学校の価値を最大限に評価する独自のバリュエーション手法です。

「後継者がいないが学校を存続させたい」「経営が厳しくなり将来が不安」「地域の看護人材養成を守りたい」——そのようなお悩みをお持ちの看護学校経営者様は、まずはお気軽にご相談ください。初回相談は無料です。

お電話でのお問い合わせ: 03-4560-0084

また、スイミングスクールのM&Aをはじめ、さまざまな教育業種のM&A解説記事もご用意しておりますので、あわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 看護学校のM&Aにかかる費用はどのくらいですか?

教育業界M&A総合センターでは、譲渡企業様の仲介手数料は無料です。譲渡の規模や条件によりますが、通常のM&Aプロセス(6〜12か月程度)の中で発生するデューデリジェンス費用や法務費用は、買い手側が負担するのが一般的です。

Q. M&A後も学校の名称やカリキュラムは維持されますか?

多くの場合、在校生が卒業するまでは現行のカリキュラムと学校名称が維持されます。譲渡条件として学校名の継続使用を盛り込むことも可能であり、交渉段階で調整いたします。

Q. 教職員の雇用は守られますか?

看護学校の運営には専任教員の確保が不可欠であるため、多くの買い手は教職員の継続雇用を前提としています。雇用条件の維持は譲渡契約の中で明記することが一般的です。

Q. 秘密保持はどのように守られますか?

M&Aの検討段階から成約まで、秘密保持契約(NDA)を締結し、情報管理を徹底します。在校生、教職員、実習先などの関係者への開示タイミングは、譲渡企業様のご意向に沿って慎重に進めます。

Q. 赤字経営でもM&A・事業承継は可能ですか?

可能です。看護学校の価値は収益性だけでなく、養成所指定(認可)の取得、立地条件、実習先との提携関係、教育実績など多面的に評価されます。赤字であっても、買い手にとって戦略的価値がある場合はM&Aが成立しています。