学習塾のM&Aでは、退塾率の高低だけでなく、なぜ退塾したのか、同じ理由が承継後も続くのかを説明できる資料が必要です。この記事では、退塾理由の分類、校舎別の確認、改善対応の記録を整理します。退塾率そのものの計算方法は、退塾率・継続率の見せ方をご覧ください。
退塾理由は「確認した事実」と「推測」を分ける
退塾届、保護者面談の記録、担当者への聞き取りを照合し、理由が確認できないケースは「未確認」とします。「競合塾に移ったはず」といった推測を確定情報として集計すると、買い手が誤った改善策を考える原因になります。
- 受験終了・卒業:予定どおりの修了か、進学後の継続コースを案内したかを確認する。
- 転居・通学条件:移転先、送迎負担、開講時間など、把握できた事情だけを記録する。
- 料金・家計事情:値上げ時期やコース変更の有無を確認し、一律に指導品質の問題と扱わない。
- 指導・面談への不満:科目、担当変更、面談対応などの具体的な指摘と、その後の対応を記録する。
- 他塾への変更:保護者等から確認できた範囲で、授業形式、進路方針、時間割などの選択理由を整理する。
- 未確認・複数理由:無理に一つへ分類せず、主な理由と補足を分ける。
校舎別・月別・学年別に同じ基準で集計する
直近12か月など対象期間を定め、各月の月初在籍数、退塾人数、退塾率、理由別人数を並べます。休会、校舎間移動、卒業を退塾へ含めるかは注記し、前年同月も同じ定義で比較します。少人数の学年では1名の変動で率が大きく変わるため、率と人数を併記します。
校舎別PLや月謝・講習売上と照合すると、人数の減少と売上への影響を分けて確認できます。代表者や教室長の交代、料金改定、講師の退職があった月も注記し、退塾理由との関係を検討します。時期が一致しただけで原因と断定しないことが大切です。
改善できる課題と季節要因を区別する
受験終了のように毎年発生する退塾と、面談不足や担当変更への不満による退塾では、引継ぎ時の対応が異なります。前者は翌年度の募集計画と継続コース、後者は面談体制や講師配置の改善を確認します。
- 課題:どの校舎・学年で、何が起きたか
- 対応:面談、担当変更、時間割調整など何を実施したか
- 担当と時期:誰が、いつから行ったか
- 結果:同じ集計基準で、その後の人数・率がどう推移したか
- 残る課題:継続中の対応と、買い手へ引き継ぐ判断事項
改善施策の実施だけで退塾率の低下や売却価格の上昇を保証することはできません。記録の目的は、買い手が現状と承継後の対応を判断できるようにすることです。
個人が特定される情報は開示範囲を確認する
初期の候補先検討では、生徒名、保護者名、成績、個別の面談内容を含まない集計資料を中心にします。少人数の学年や特殊な事情は集計値からも個人が推測される場合があるため、分類のまとめ方にも配慮します。詳細開示は、秘密保持契約に加えて利用目的・必要性・閲覧者・保管方法を確認し、段階的に行います。
保護者への説明と講師の引継ぎを準備する
譲渡後に変わることと維持することを整理し、料金、授業、担当講師、時間割、問い合わせ先について、誰がいつ説明するかを決めます。入試期や講習期の影響を考慮し、教室長の残留・引継ぎ可能期間、代表者が担当してきた面談業務も確認します。
相談前に用意する資料
- 月別在籍・入塾・退塾人数と計算定義
- 退塾理由の分類表、確認方法、未確認件数
- 校舎別PL、月謝・講習・教材費の売上内訳
- 講師・教室長の役割、引継ぎ予定、保護者説明案
- 賃貸借、FC、教材、LMSなどの契約一覧
資料がすべてそろっていなくても、現時点で分かることと未確認事項を分けるところから始められます。教育業界M&A総合センターの支援内容と料金を確認し、相談窓口からご相談ください。
