はじめに
保育園・認定こども園のM&Aは、少子化の進行と経営者の高齢化を背景に年々増加しています。全国で約3万8,000か所の保育所と約9,200か所の認定こども園が運営されていますが、地域によっては定員割れが深刻化し、後継者不在に悩む経営者も少なくありません。本記事では、保育園・認定こども園のM&A・事業承継について、業界の現状から具体的な事例、売却相場まで網羅的に解説します。「園を閉じるしかないのか」とお考えのオーナー様にこそ、M&Aという選択肢を知っていただきたいと考えています。
保育園・認定こども園業界の現状と市場動向
保育園・認定こども園業界は、制度改革と少子化という2つの大きな潮流のなかで転換期を迎えています。保育サービス全体の市場規模は約4兆円と推定され、国の保育関係予算は2025年度に約2兆3,996億円が計上されるなど、公的支援は依然として手厚い状況です。
待機児童問題の大幅改善
2025年4月1日時点の待機児童数は2,254人となり、ピークであった2017年の26,081人から8年連続で減少しました。2017年比で10分の1以下の水準まで改善しており、都市部を除けば待機児童問題はほぼ解消に向かっています。
少子化と「2025年問題」
一方で、出生数の減少は加速しています。2024年の出生数は約70万人を割り込む水準となり、保育所利用児童数も2023年度から3年連続で減少傾向にあります。特に0歳児の利用減が顕著です。2025年から2029年の5年間で保育ニーズは約8.6万人減少する一方、利用定員数は約2.2万人分増加する見込みであり、需給バランスの逆転が本格化します。
認定こども園への移行トレンド
幼稚園から認定こども園への移行が進んでおり、認定こども園の数は年々増加しています。幼保連携型の認定こども園は、保育と教育を一体的に提供できるため保護者からの人気が高く、経営の安定性も比較的高い傾向にあります。関連する幼稚園のM&A・事業承継についても、併せてご確認ください。
保育園・認定こども園業界でM&A・事業承継が増加している背景
保育園・認定こども園のM&Aが増加している背景には、業界構造の変化と経営者側の事情が複合的に関係しています。
経営者の高齢化と後継者不足
社会福祉法人や個人経営の保育園では、創業者・理事長の高齢化が進んでいます。親族内に後継者がいないケースが増えており、「園を存続させたいが引き継ぐ人がいない」という悩みを抱える経営者が多数います。M&Aは、第三者への事業承継を実現し、園児・保護者・職員を守る有力な選択肢です。
園児数減少による経営圧迫
少子化の進行により、地方を中心に定員割れが深刻化しています。定員充足率の低下は補助金収入の減少に直結するため、単独での経営継続が困難になるケースが増えています。大手保育事業者や異業種企業とのM&Aにより、経営基盤を強化する動きが活発化しています。
保育士不足と人材確保の困難
保育士の有効求人倍率は全産業平均を大きく上回る水準が続いており、人材確保は保育園経営における最大の課題の一つです。大手グループに参加することで、採用力の強化や処遇改善、キャリアパスの整備が可能となり、職員の定着率向上にもつながります。
規制強化と運営コストの増大
配置基準の見直しや処遇改善加算への対応など、保育の質を担保するための規制強化が進んでいます。ICT化や安全管理体制の整備にも投資が必要であり、小規模事業者にとっては負担が大きくなっています。スケールメリットを活かせる大手への統合が進む要因となっています。
保育園・認定こども園のM&Aにおける相場・バリュエーション
保育園・認定こども園のM&Aにおける売却価格は、施設の形態(認可・認可外)、規模、立地、収益性によって大きく異なります。
主な評価方法
保育事業の企業価値評価では、EBITDA倍率法と純資産法の組み合わせが最も多く用いられます。認可保育所の場合、EBITDA倍率は3〜6倍が目安です。認可外保育施設は補助金収入がないため収益の安定性が低く、2〜4倍程度に落ち着くことが一般的です。
売却価格の具体的な目安
利益倍率方式では「年間営業利益×2〜5倍」が相場とされています。例えばEBITDAが年間3,000万円の認可保育所であれば、売却価格は9,000万円〜1億8,000万円が目安です。土地・建物を自社所有している場合は、不動産の時価評価額が加算されます。
業界特有の評価ポイント
保育園M&Aで特に重視される評価項目は以下のとおりです。定員充足率(90%以上が望ましい)、保育士の定着率と有資格者比率、施設の築年数と修繕状況、自治体との関係性と認可の安定性、立地条件(住宅地・駅近など)、保護者からの評判と口コミ評価が主な判断材料となります。
保育園・認定こども園業界のM&A事例
近年の保育園業界では、大手事業者による買収や事業再編が活発に行われています。以下に代表的な事例を紹介します。
事例1:ライクによるデジタルディフェンス買収(2024年7月)
保育・人材サービス大手のライク株式会社は、2024年7月にデジタルディフェンス株式会社を買収しました。デジタルディフェンスは西東京市で認可保育園3園(田無すくすく保育園、谷戸のびのび保育園、同分園)を運営しています。ライクグループは全国で保育施設を展開しており、本件により首都圏西部エリアの事業基盤を強化しました。既存の運営ノウハウとスケールメリットを活かし、保育の質向上と経営効率化の両立を図っています。
事例2:グローバルキッズCOMPANYによる事業譲渡(2024年7月)
株式会社グローバルキッズCOMPANYは、連結子会社のグローバルキッズが運営する認可保育所3園を、社会福祉法人すくすくどろんこの会へ事業譲渡しました。大手保育事業者が不採算施設や戦略的に合致しない施設を社会福祉法人に移管する事例であり、事業ポートフォリオの最適化と地域保育の継続を両立させたケースです。
事例3:AIAIグループによるぽこころ買収(2024年10月)
AIAIグループ株式会社の連結子会社であるAIAI Child Care株式会社は、2024年10月にぽこころ株式会社の全株式を取得しました。テルウェル東日本株式会社が運営していた保育事業を譲り受ける形で、AIAIグループの保育施設ネットワークを拡大しています。異業種(通信系グループ)からの事業売却として注目された事例です。教育業界のさまざまなM&A事例も参考になります。
保育園・認定こども園のM&Aを成功させるためのポイント
保育園のM&Aは、通常の企業M&Aとは異なる特有の注意点があります。以下のポイントを押さえることで、円滑な事業承継が実現できます。
自治体との事前協議が不可欠
認可保育所のM&Aでは、運営主体の変更に自治体の承認が必要です。事前に所管の自治体と協議し、認可の継続条件や届出手続きを確認することが最も重要なステップです。自治体によって対応が異なるため、早期の相談が求められます。
保育士・職員への丁寧な説明
保育園の価値の大部分は「人」にあります。M&Aに伴う運営主体の変更は職員に不安を与えるため、雇用条件の維持・改善を明確に示し、丁寧な説明を行うことが不可欠です。保育士の離職を防ぐことが、M&A後の安定運営に直結します。
保護者への配慮と情報開示
園児の保護者に対しても、M&Aの目的や今後の運営方針を適切なタイミングで説明する必要があります。保育内容や行事の継続性を約束し、保護者の不安を払拭することが重要です。
デューデリジェンスの重要項目
保育園M&Aのデューデリジェンスでは、補助金の受給状況と適正性、施設の建築基準法・消防法への適合状況、保育士の配置基準の充足状況、過去の行政指導・監査の履歴、土地・建物の権利関係(賃貸借契約の条件を含む)を重点的に確認します。看護学校のM&Aと同様に、許認可事業特有の確認事項が多い点が特徴です。
保育園・認定こども園のM&A・事業承継なら教育業界M&A総合センターへ
教育業界M&A総合センターは、教育業界に特化したM&A仲介サービスを提供しています。保育園・認定こども園のM&Aにおいても、業界特有の事情を熟知した専門アドバイザーが、譲渡企業様の立場に寄り添いながら最適な承継先をお探しします。
当センターの特徴は以下のとおりです。教育業界に特化した豊富なネットワークと知見を持ち、譲渡企業様の仲介手数料は完全無料です。秘密保持を徹底し、職員・保護者に配慮した慎重な進行を行います。自治体との協議や認可手続きについてもサポートいたします。
「園の将来が不安」「後継者がいない」「まずは相場を知りたい」など、どのようなご相談でもお気軽にお問い合わせください。初回相談は無料です。
お電話でのお問い合わせ: 03-4560-0084
よくある質問(FAQ)
Q. 保育園のM&Aにはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 一般的に6か月〜1年程度が目安です。ただし、認可保育所の場合は自治体との協議や認可変更手続きが必要なため、通常のM&Aよりも時間がかかることがあります。事前準備を早めに始めることをお勧めします。
Q. 譲渡企業側に費用はかかりますか?
A. 教育業界M&A総合センターでは、譲渡企業様の仲介手数料は完全無料です。初回のご相談から成約まで、費用は一切いただきません。
Q. M&Aを検討していることは職員や保護者に知られませんか?
A. 秘密保持を徹底しております。NDA(秘密保持契約)を締結したうえで進行し、職員・保護者への開示は、買い手候補が確定し条件が合意された段階で、譲渡企業様と相談のうえ適切なタイミングで行います。
Q. 社会福祉法人が運営する保育園でもM&Aは可能ですか?
A. 可能です。社会福祉法人の場合は株式譲渡ではなく、事業譲渡や理事の交代などのスキームが用いられます。法人形態に応じた最適な承継方法をご提案いたします。
Q. 認可の継続は保証されますか?
A. 認可の継続には自治体の承認が必要です。M&Aの計画段階から自治体と事前協議を行い、認可が円滑に継続されるよう進行します。当センターでは、行政対応の経験豊富なアドバイザーがサポートいたします。
